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最終更新時刻:17時11分

SNSへの書き込みから計測する「日本の空気感指数」において属性別の指数化を実現

2024/08/14  株式会社 野村総合研究所 

野村総合研究所、SNSへの書き込みから計測する「日本の空気感指数」において属性別の指数化を実現

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#データアナリティクス

2024/08/14

株式会社野村総合研究所

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤花芽、以下「NRI」)は、SNSへの書き込み情報をもとに、日本の生活者や社会の「感情の状態」を指数化した「日本の空気感指数」を、属性別に指数化できるようにしました1 。空気感指数(以下「本指数」)は、筑波大学システム情報系の佐野幸恵准教授との共同研究2 をもとに開発しており、政策検討・経済予測・マーケティング戦略などへ活用することを目指しています。

計測した感情と属性

本指数は「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「不安」「疲れ」「平穏」の7つの指標で構成されています。

図表1:空気感指数の7指標の感情

指標 該当する感情
活気 元気、活発、陽気、精力的、積極的、みなぎる、イキイキなどの感情
混乱 混乱、錯乱、当惑、自信がない、あ然、ゴタゴタなどの感情
落込み 悲しみ、憂うつ、孤独、おびえ、何もできない、ガッカリなどの感情
怒り 怒る、困る、反抗、不機嫌、腹立たしい、イライラなどの感情
不安 心配、不安、懸念、緊張、落ち着かない、ソワソワなどの感情
疲れ 疲れた、くたびれた、だるい、うんざり、ヘトヘトなどの感情
平穏 和やか、信頼、親身、ほっこり、ほのぼのなどの感情

属性別の指数化にあたっては、X社の仕様変更に伴ってデータソースの見直しを行い3 、各指標の属性別算出を可能としました。今回は以下の属性で集計を行いました。

・年代別

:30歳未満、30歳以上

・就労状況別

:就労者、非就労者

・地域別4

:関東圏、関西圏、中京圏、その他

日本の「空気感」を変えた出来事

まず、2023年以降の空気感指数が図表2です。指標の値が大きく変化したタイミングでは、その指標に関連する大きな出来事がある場合が多く、該当すると思われる代表的な出来事を吹き出しの形式で記載しています。

図表2:「日本の空気感指数」2023年以降の週次変動と主な出来事

出所:NRI

各指標の分析は次の通りです。

  • 「活気」指標にはスポーツイベントが影響していることが多く、2023年3月の野球ワールドベースボールクラシックの日本優勝で大きく高まっています。
  • 「混乱」指標は事件・事故で高まることが多く、2023年11月におきたオスプレイの墜落事故などが混乱を高めていると考えられます。
  • 「落込み」指標は有名人の死去などで高まることが多い指標です。鳥山明氏(代表作「ドラゴンボール」)の死去を受け、落込みが高まっていました。
  • 「不安」指標は自然災害の影響を受けることが多いです。2024年1月の能登半島地震は不安を大きく高め、2023年以降では最も空気感を変えた出来事でした。2023年5月にも発生していた能登群発地震でも不安は高まっており、2024年1月の能登半島地震による不安感を増幅させたことがうかがえます。
  • 「怒り」指標は大きな変動が少ない指標ですが、2023年2月、いわゆる闇バイトの容疑者集団が日本に強制送還されたタイミングで高まっています。
  • 「疲れ」指標は2023年7月~8月で高まっており、東京で64日間真夏日が続くなど記録的な猛暑の影響が疲れの感覚を高めたと考えられます。
  • 「平穏」指標は2023年1月から高い水準にあり、新型コロナが沈静化したことが影響していると考えられます。コロナが5類に移行した2023年5月にも、平穏指標がわずかに高まりました。

属性で異なる「空気感」

出来事は、生活者の属性によりインパクトの大きさが変わります。図表3は、「年代」「地域」「就労状況」という属性によって特徴的な変動がみられた出来事を抽出したものです。日ごとの各指数の変動と出来事の発生日付から、各出来事が指標に及ぼした影響を推測することができます。

図表3:空気感指数の属性別の影響(指標が大きく動いた事象前後の属性別変化)

注:各事象が起こる前(1日)の指標と、事象が起こった後(原則2日間)の指標の平均値の比較

出所:NRI

【年代別(活気)】2023年3月の野球のワールドベースボールクラシック(WBC)前後では、活気指標が1.06から1.47へと変化し、上昇率は+39%でした。年代別でみると、30歳未満の活気指標は動きが小さいのに対し、30歳以上では+116%という大幅な上昇率でした。若年層の野球離れなどが危惧されているものの、30歳以上の年齢層ではWBCが一定の影響力をもったといえます。

【地域別(活気)】2023年11月の阪神タイガース日本一の前後では、日本全体の活気指標は0.99から1.04という小幅な動き(上昇率+4%)でしたが、地域別でみると関西圏での上昇率は+55%、関東圏では-38%と、地域差が顕著に出ており、このニュースへの反応の濃淡がうかがえます。

【就労状況別(疲れ)】2024年のゴールデンウィークは、最大10連休など大型連休の取得が話題になりました。ゴールデンウィークが終わる前後の疲れ指標を就労状況別にみると、就労者の疲れ指標は上昇率+101%でほぼ2倍の水準になっていたのに対し、非就労者では-36%と減少しています。ゴールデンウィーク終了に伴い就労者は仕事に戻ることで疲れを感じ、非就労者の場合はむしろ、ゴールデンウィーク期間中の方が疲れを感じていたことになります。

今後の展望

空気感指数を計測することは、日本社会の動向の一端を把握するだけではなく、社会をより良くするための行動変容や、そのための方策・政策などの導出にもつながります。
NRIはこれからも、「日本の空気感指数」の研究を続け、その成果を発表していく予定です。企業・政府・自治体などの戦略策定の際に本指数が一助となり、日本社会がより良い方向に向かうことを期待します。

  • 1

    空気感指数の詳細は次のURLをご参照ください。https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/ka/air_quality_index

  • 2

    松本涼花、中西映人、大友直史、田村光太郎、塩崎潤一、佐野幸恵「SNSデータから測定する日本の空気感指数」(『人工知能学会全国大会論文集』第38回(2024)、4G1-GS-4-03)

  • 3

    2023年3月におけるTwitter社によるAPIの仕様変更に伴い、Hottolink社が提供するXの投稿データを利用するように、変更を加えています。同じXの投稿件数となるデータですが、旧指標とは異なり、投稿件数が全数の10%サンプリングのデータとなっています。また、今回の指標の算出では単語の投稿件数同士が新旧で整合するように、データの重複する期間から件数の補正を行っています。発表している指数は、2023年4月1日の指標値から新しく算出した指標値となっていますが、旧指標とも比較できるように調整されています。

  • 4

    関東圏:埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県、関西圏:京都府・大阪府・兵庫県・奈良県、中京圏:岐阜県・愛知県・三重県、その他:関東圏・関西圏・中京圏以外の道県

【ご参考】

空気感指数に関するこれまでの発表

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株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件調査の担当


株式会社野村総合研究所 未来創発センター 塩崎、田村

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