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当社悪性黒色腫治療薬の希少疾患用医薬品指定に関するお知らせ

2024/09/02  株式会社 レナサイエンス 

2024 年9月2日

株式会社レナサイエンス

当社悪性黒色腫治療薬の希少疾患用医薬品指定に関するお知らせ

当社の悪性黒色腫治療薬 RS5614 が、2024 年8月 28 日付で厚生労働省より希少疾患用医薬品*1の指定を受けましたのでお知らせいたします。

がん治療の基本は、①外科的療法、②放射線療法、③化学療法(抗がん剤)、④免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬*2)です。人体は、外来のウイルス、細菌、微生物から体を守る免疫というシステムを持っていますが、体内には過剰な免疫を抑制する免疫チェックポイント分子*3が備わっています。がんはこの免疫チェックポイント分子を悪用することで自分自身に対する免疫が働かないようにしています。免疫チェックポイント阻害薬は、この免疫チェックポイント分子を阻害することで、ブレーキを解除して免疫ががんを攻撃できるようにします。当社は、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)が免疫チェックポイント分子を介してがん免疫を阻害することを発見しました。実際に動物モデルを用いた非臨床試験で、当社が開発した PAI-1 阻害薬 RS5614 を経口投与することで悪性黒色腫、大腸がん、肺がんなどのがんが退縮すること、さらに免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(オプチーボ)*4との併用でこの作用は著しく増強することが分かりました。

免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが無効な外科的に根治切除が難しい悪性黒色腫患者を対象に、RS5614 とニボルマブとの併用の有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相試験を、東北大学病院、筑波大学附属病院、東京都立駒込病院、名古屋市立大学病院、近畿大学病院、熊本大学病院の医療機関と共同で実施しました。その結果、悪性黒色腫の2次治療において RS5614 とニボルマブの併用は、既存治療であるイピリムマブ*5とニボルマブの併用療法と同等若しくは上回る有効性と安全性を示しました(2024 年2月 22 日最終結果報告)。本試験では患者 39 人に対し 2 か月間投与しましたが、半数以上の患者の症状が半年間悪化せず、投与終了後もニボルマブの効果が続きました。従来の薬(ニボルマブとイピリムマブの併用*6)では約 6 割の患者に重大な副作用が出ていましたが、当社の RS5614との併用では 7.7%と安全性は極めて高いことが分かりました。

既に、2023 年 12 月に実施した PMDA 対面助言により次相試験の臨床プロトコールは確定しているので、2024 年度中に承認申請のための第Ⅲ相試験を開始する予定です。

今回、希少疾患用医薬品指定を受けたことにより、悪性黒色腫治療薬 RS5614 の薬価算定における市場性加算が加わり、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。また、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所を通じての助成金交付などの優遇措置が受けられます。

なお、本件による 2025 年3月期の業績予想の変更はありません。

以上

*1希少疾患用医薬品
主に、難病といわれるような、患者の数が少なく治療法も確立されていない病気のための医薬品です。対象患者数が 5 万人未満、難病などの重篤な疾病が対象、医療上の必要性が高い、代替する適切な医薬品や治療方法がない、既存の医薬品と比較して著しく高い有効性または安全性が期待される、開発の可能性が高いこと、といった指定基準があります。希少疾患用医薬品に指定されると、PMDA の優先的な審査(審査期間の短縮)、薬価算定における市場性加算、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。また、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所を通じての助成金交付などの優遇措置が受けられます。

*2免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント分子の作用を阻害する医薬品で、現在治療薬として用いられている薬剤はすべて免疫チェックポイント分子に直接結合しそれを阻害する抗体医薬です。

*3免疫チェックポイント分子
免疫の恒常性を保つために、自己に対する免疫応答を阻害し過剰な免疫反応を抑制する分子群です。免疫チェックポイント分子はリンパ球の過剰な活性化を抑制して自己を攻撃させないために存在しますが、がん細胞は免疫系からの攻撃を回避するために免疫チェックポイント分子を悪用します。現在、PD-1、CTLA-4 などさまざまな免疫チェックポイント分子が同定されています。

*4ニボルマブ
プログラム細胞死 1(PD-1)という免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬(ヒト型抗ヒト PD-1 モノクローナル抗体)で、免疫系の抑制解除による抗がん作用を狙った医薬品で代表的な免疫チェックポイント阻害薬です。

*5イピリムマブ
細胞傷害性 T リンパ球抗原-4(CTLA-4)という免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬(ヒト型抗ヒト CTLA-4 モノクローナル抗体)で、ニボルマブとは異なる標的の免疫チェックポイント阻害薬です。ニボルマブ無効例に対して、ニボルマブとイピリムマブとの併用薬として保険適応が認められており、その奏効率は海外 21%、国内 13.5%と考えられます。しかし、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法は、半数を超える患者に重篤な副作用が出現し、単剤投与に比べて投与中止となる重度の免疫関連副作用の発現頻度は 4 倍と高く、数か月に及ぶ入院やがんに対する治療の中断が必 要となることが問題となっています。さらに、高額医療費の課題もあり、抗体とモダリティが異なる経口投与可能で、副作用が少なく、奏効率を上昇させ、安価な併用薬が待ち望まれています。

*6ニボルマブ・イピリムマブ併用
未治療進行・再発非小細胞肺がんを対象とした第Ⅲ相多施設共同臨床試験において、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ・イピリムマブ併用療法を行った患者で、治療との因果関係を否定できない死亡が予期していた範囲を超える約7.4%(148 人のうち 11 人)で認められ、2023 年 3 月 30日に本試験は中止されました。

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