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第 4 回 生活者の環境危機意識調査 (日本と海外24か国対象)   世界25か国で危機的だと思う問題1位は「気候変動」、異常気象を懸念

2023/09/06  公益財団法人 旭硝子財団 

現時点(2023年)の感覚的なSDGs達成度は35%、Z世代の平均は41%でやや高い         達成度が低いと思うSDGs目標で「平等」や「平和」を懸念

公益財団法人旭硝子財団(理事長 島村琢哉、所在地 東京都千代田区)は、日本と海外24か国の10~60代の男女13,500名 (Z世代:18~24歳 6,589名、大人世代:25~69歳 6,911名)に対し、環境問題への危機意識および行動について把握するため、「第4回 生活者の環境危機意識調査」を実施しました。本調査は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科蟹江憲史(かにえのりちか)教授監修のもと、インターネットにて実施しました。


主な調査結果は以下のとおりです。

◆自国内の環境問題で危機的だと思う項目1位は「気候変動」、世界各地の異常気象・異常気温を懸念。
2位「社会、経済と環境、政策、施策」、3位「水資源」。

◆環境問題の意識や行動が進んでいると思う国は、1位日本、2位アメリカ、3位中国。
日本を選んだ理由は「人々が規律正しい」「優れた技術がある」など。

◆現時点(2023年)の感覚的なSDGs達成度は、全体平均は35.0%。Z世代の平均は41.1%で、大人世代の33.9%よりやや高い。日本国内では、平均25.3%と他国より感覚的な達成度が低い。

◆日々の生活で関心を持っているSDGsの目標は、1位「貧困をなくそう」、2位「飢餓をゼロに」、3位「すべての人に健康と福祉を」。「気候変動に具体的な対策を」は上位3位以内に入らず。
日本国内では、そもそも「関心を持っているものはない」人が約2割と他国より多い傾向。

◆2030年に達成度が高いと思うSDGsの目標、同率1位で「飢餓をゼロに」・「すべての人に健康と福祉を」、3位「貧困をなくそう」。達成度が低いと思うものは、1位「貧困をなくそう」、2位「人や国の不平等をなくそう」、3位「平和と公正をすべての人に」。ロシア・ウクライナ問題の影響か平等や平和について懸念する人の割合が多い傾向。

◆環境危機時計(環境危機意識を時刻(0:01~12:00の範囲)に例えたもの)は、「7時23分」と「かなり不安」を感じている。世代別では、Z世代「7時3分」、大人世代「7時27分」と大人世代の方がやや不安を感じている。
世界の有識者の回答「9時31分」の「極めて不安」とは2時間程度の差はあるが、いずれも危機意識は高い。

※本リリースは当財団 ウェブサイト(https://www.af-info.or.jp)でもご覧いただけます。

<調査概要>
・調査目的 :日本と海外の一般生活者の環境問題に対する意識や行動の実態を把握する
・調査対象 :男女13,500名 (18~24歳 6,589名、25~69歳 6,911名)
・調査地域 :日本と海外24か国
       (韓国、中国、シンガポール、インドネシア、インド、オーストラリア、アメリカ、
        カナダ、メキシコ、ブラジル、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、
ベルギー、ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、トルコ、アラブ首長国連邦、
エジプト、ナイジェリア、南アフリカ)
・調査方法 :インターネットリサーチ
・調査時期 :2023年6月9日(金)~7月5日(水)
・有効回答数:13,500サンプル
・調査主体 :公益財団法人 旭硝子財団
※次ページ以降のQ1,Q4,Q5,Q6の設問については、旭硝子財団が実施している世界の環境問題に携わる有識者を対象とした「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の2023年の調査を、一般生活者向けに簡易化して調査した内容です。
※「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」は、1992年から毎年実施しており、旭硝子財団保有データベースに基づき、世界各国の政府・自治体、NGO/NPO 、大学・研究機関、企業、マス・メディア、民間等の環境問題に関する有識者に、地球環境に関する現状認識を問うものです。有識者が人類存続に対して抱く危機感を時計の針で表示する「環境危機時計(R)」を独自に設定し、毎年アンケート調査をしています。

<調査詳細>
◆自国内の環境問題で危機的だと思う項目1位は「気候変動」、世界各地の異常気象・異常気温を懸念。
2位「社会、経済と環境、政策、施策」、3位「水資源」。

Q1.あなたの国や地域における環境問題を考える上で、危機的な状態にあると考える項目を以下の表より
3つ選んで、1位~3位の順位付けをしてください。また、その理由を具体的に記載ください。
※項目は、有識者を対象とした「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」と同内容のものを使用しています
・日本を含む各国のそれぞれの国における環境問題において、危機的な状態にあると考える項目として最も多かったのは、昨年に引き続き25か国全体で1位「気候変動」(37.5%)でした。その理由として、各国で頻発化・深刻化する異常気象や異常気温を懸念する回答が多く寄せられました。
・続いて、2位「社会、経済と環境、政策、施策」(13.9%)、3位「水資源」(10.9%)の順となりました。
・有識者を対象とした旭硝子財団の本年のアンケート調査結果でも、「気候変動」が最も危機意識が高い項目となりました。
・上位3位の項目を選んだ主な理由は、以下の通りです。(※一部抜粋)

<気候変動>
「高温や山火事など、これまでに見たことのないことが起こっている」(アメリカ)
「近年の夏の最高温度が毎年更新されるし、春や秋が短くなったと感じる」(日本)
「激しい天気の変化は、家畜に影響を及ぼし飢餓を引き起こし、植物は枯れてしまった」(南アフリカ)

<社会、経済と環境、政策、施策>
「政府は環境問題を優先せず、環境に優しい製品の購入を奨励するインセンティブがない」(イギリス)
「環境法違反者には厳格な法律と巨額の罰金を設けるべき」(インド)
「世界の気候問題にはいくつかの解決策があるが、最も差し迫った問題は飢餓」(インドネシア)

<水資源>
「自分たちの水の消費量を認識しておらず、節水活動も行っていない」(オーストラリア)
「自国を含む世界の大部分で干ばつが発生しており、水の利用可能量が減少している」(スウェーデン)
「多くの地域の販売店で水不足が多く見られ、ミネラルウォーターの価格も年々上昇している」(中国)

・ 日本国内で最も多かった項目は、昨年に引き続き「気候変動」(46.5%)で、海外よりも危機意識が高いことがわかりました。続いて「社会、経済と環境、政策、施策」(11.6%)、「人口」(10.6%)の順となりました。(※下記グラフはグローバルでの集計結果です)


◆環境問題の意識や行動が進んでいると思う国は、1位日本、2位アメリカ、3位中国。
日本を選んだ理由は「人々が規律正しい」「優れた技術がある」など。

Q2.環境問題への取り組みについて、国民の意識や行動において進んでいるイメージがある国を、国の
リスト※より3つ挙げて、1位~3位の順位付けをしてください。また、その理由を具体的に記載ください。
※国のリストは、国連が定める持続可能な開発目標の達成度を国別にランキングにした「2022年版SDGsインデックス&ダッシュボード」から上位50位および本調査の対象国を抜粋しています
・環境問題について国民の意識や行動が進んでいると思う国は、25か国全体で1位日本、2位アメリカ、3位中国となりました。インドネシア、トルコでは日本を1位に選ぶ回答者が多く、日本を選んだ理由として、「人々が規律正しい」「優れた技術がある」などの回答が多く寄せられました。
・国別では、上記インドネシア、トルコのほか、ナイジェリア、ベルギー、ポーランドを除く20か国については、自国を1位に選んだ回答者が多くいました。
・日本国内では、1位日本、2位フィンランド、3位スウェーデンで、北欧への印象が強い傾向にありました。
・上位3位の国を選んだ主な理由は、以下の通りです。(※一部抜粋)

<日本>
「日本は非常に規律があり、優れた技術を持っていることで知られている」(インドネシア)
「自分が行く場所の環境をきれいに保ち、他の人に模範を示していると思う」(トルコ)
「日本はゴミの仕分けなどがちゃんとできている、と言う外国の人が意外と多い」(日本)

<アメリカ>
「地球温暖化や気候変動に関連する問題に対するあらゆる運動を始めた国」(アラブ首長国連邦)
「全世界で最も発展した国で、暑さを克服するためのあらゆる資源と技術を持ってる」(インド)
「他のどこよりも環境に配慮しようと努めている企業がたくさんある」(アメリカ)

<中国>
「クリーンエネルギー、電気自動車、数百万本の樹木の利用を促進している」(シンガポール)
「非常に短期間で、地球上で最も汚染の多い国から最も汚染の少ない国になった」(スペイン)
「環境を破壊するあらゆる活動を禁止する規制を施行し、関連法を発行してきた」(中国)


◆現時点(2023年)の感覚的なSDGs達成度は、全体平均は35.0%。Z世代の平均は41.1%で、大人世代の33.9%よりやや高い。日本国内では、平均25.3%と他国より感覚的な達成度が低い。

Q3. 2030年までの目標に向けて、17あるSDGsが、全体として2023年時点でどの程度達成できていると思いますか。全目標達成を100%として、1~100の数字でお答えください。
目標に向かっていると思わない場合は「0」を入力してください。
※SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミット で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
・2023年時点での感覚的なSDGs達成度について、国によりばらつきはありますが、25か国平均で35.0%という結果となりました。開発途上国のほうが達成度を高く感じる傾向にあります。
・一方、達成度0%と回答したのは25か国平均で10.8%と、約1割がまったく達成できていないと回答しました。
・世代別では、Z世代の平均は41.1%、大人世代の平均は33.9%と、Z世代の方が7.2ポイント達成度を高く感じている傾向にありました。

・国別では、インドネシアが53.6%と最も高く、カナダが23.7%と最も低い結果となりました。
・日本国内では、25.3%と25カ国中3番目に低い結果でした。

◆日々の生活で関心を持っているSDGsの目標は、1位「貧困をなくそう」、2位「飢餓をゼロに」、3位「すべての人に健康と福祉を」。「気候変動に具体的な対策を」は上位3位以内に入らず。
日本国内では、そもそも「関心を持っているものはない」人が約2割と他国より多い傾向。

Q4. あなたが日々の生活で、17 あるSDGs目標の中で関心を持っていることを3つ選んで上から1位~3位の
順位付けをし、目標の番号でお答えください。
・SDGs目標の中で関心を持っている目標は、1位「貧困をなくそう」、2位「飢餓をゼロに」、3位「すべての人に健康と福祉を」となりました。「気候変動に具体的な対策を」は上位3位以内に入りませんでした。
・世代別では、Z世代も大人世代も、1位「貧困をなくそう」、2位「飢餓をゼロに」でしたが、3位について、Z世代は「すべての人に健康と福祉を」、大人世代は「気候変動に具体的な対策を」とちがいがみられました。
・国別では、スウェーデンで1位「安全な水とトイレを世界中に」、イギリスで2位「気候変動に具体的な対策を」など関心度に差異がありました。
・有識者を対象とした旭硝子財団の本年のアンケート調査結果では、1位「気候変動に具体的な対策を」、2位「すべての人に健康と福祉を」となりました。
・日本国内では、同率1位で「貧困をなくそう」・「気候変動に具体的な対策を」となりました。
なお、「関心を持っているものはない」と回答した人が、21.4%と他国に比べて高い結果となりました。


◆2030年に達成度が高いと思うSDGsの目標、同率1位で「飢餓をゼロに」・「すべての人に健康と福祉を」、3位「貧困をなくそう」。達成度が低いと思うものは、1位「貧困をなくそう」、2位「人や国の不平等をなくそう」、3位「平和と公正をすべての人に」。ロシア・ウクライナ問題の影響か平等や平和について懸念する人の割合が多い傾向。

Q5.あなたの国や地域において、17あるSDGsの目標の中で2030年に達成度が高い(あるいは低い)と思うものを3つ選んで高い(あるいは低い)ものから順に1位~3位の順位付けをし、目標の番号でお答えください。
・SDGsの目標のうち2030年において達成度が高いと思うものは、25か国全体で同率1位「飢餓をゼロに」・「すべての人に健康と福祉を」、3位「貧困をなくそう」となりました。
・有識者を対象とした旭硝子財団の本年のアンケート調査結果では、自分の住む国・地域で2030年に達成度が高いと思うものの1位は、「安全な水とトイレを世界中に」となりました。
・日本国内では、1位「安全な水とトイレを世界中に」、2位「飢餓をゼロに」、3位「質の高い教育をみんなに」となりました。

・SDGsの目標のうち2030年において達成度が低いと思うものは、25か国全体で1位「貧困をなくそう」、2位「人や国の不平等をなくそう」、3位「平和と公正をすべての人に」となりました。世界的にロシア・ウクライナ問題の影響があってか、平等や平和について懸念を示す傾向がみられました。
・有識者を対象とした旭硝子財団の本年のアンケート調査結果では、自分の住む国・地域で2030年に達成度が低いと思うものは、1位「貧困をなくそう」となりました。
・日本国内では、1位「ジェンダー平等を実現しよう」、2位「働きがいも経済成長も」、3位「貧困をなくそう」となりました。


◆環境危機時計(環境危機意識を時刻(0:01~12:00の範囲)に例えたもの)は、「7時23分」と「かなり不安」を感じている。世代別では、Z世代「7時3分」、大人世代「7時27分」と大人世代の方がやや不安を感じている。
世界の有識者の回答「9時31分」の「極めて不安」とは2時間程度の差はあるが、いずれも危機意識は高い。

Q6.以下の図は、環境問題の意識を時計の針に例えた「環境危機時計(R)」とよばれるものです。あなたの国や地域における環境問題への危機意識を時計の針に例えて0:01 ~ 12:00の範囲で○○時○○分と答えてください。(※時刻は便宜上、10分単位で記入)
・環境問題への危機意識を時刻に例えると、25か国平均で「7時23分」となり、「かなり不安」という結果になりました。世代別では、Z世代は「7時3分」、大人世代は「7時27分」で大人世代の方がより危機を感じているものの、いずれも「かなり不安」という結果でした。
・全体では昨年に比べ時刻は2分戻りましたが、国ごとに見ると日本、中国、イタリア、ドイツでは時刻が20分以上戻り、韓国、イギリス、フランスでは20分以上進みました。
・有識者を対象とした旭硝子財団の本年の環境危機時計(R)の時刻は、「9時31分」で「極めて不安」と回答しており、一般生活者との意識には、2時間程度の差があることがわかりました。
・不安に感じる主な理由として、世界各地での異常気象をあげる回答が多く寄せられました。
・その他の理由は、以下の通りです。(※一部抜粋)
「このままでは、2050年までに大量絶滅が起こるという予測も耳にし続けてるが、各国は気候危機を防ぐためにほとんど何もしていないように見える」(アメリカ)
「人間は真剣に地球のために何をするべきか考え、行動に移さないと取り返しがつかないところまで来ていると思う」(日本)
「問題の悪化を止めたり弱めたりするには遅すぎるが、状況を好転させる時間はまだあると多くの人が感じている」(スウェーデン)
・25か国平均では昨年の結果から時刻は2分戻りましたが、日本国内では全体が「6時42分」で、昨年の結果の「7時19分」と比べると時刻は約40分戻りました。



<本調査に対する監修者の見解>
海外を含めた調査としては2回目の今回の調査も、興味深い結果が見て取れる。

今年の夏も異常気象が程度を増し、世界的にも、気候変動に起因する山火事の影響も報道されるようになった。国連事務総長がグローバル・ボイリング(地球が沸騰している)と表現しているように、気候変動の影響が世界規模で身近に感じられるようになっている。このことが、今回の調査結果にも端的に表れている。危機的な環境問題として、気候変動が群を抜いて高い意識を持たれている。

一方、環境問題についての様々な調査において、取り組みが進んでいるとされるのは、欧州各国、特に北欧の国々であり、アメリカや日本といった国々は取り組みが遅れているとして批判されている。とりわけ気候変動においてその傾向は顕著だ。

これに対して本調査では、日本やアメリカは、国民の意識や行動が進んでいる国として上位となっている。これは、質問が、政策や対策を問うものではなく、環境技術や製品、国民の環境行動といったもののイメージを問うものになっていることが要因だと考えられる。アメリカでも、連邦レベルでの政策の弱さとは対照的に、特定の企業や州における対策で進んでいるところがある。人々のイメージには、そうした「優良事例」のすばらしさに引っ張られるという側面も大きいことを示しているように思われる。また、報道のあり方にも左右されるところもあるのではなかろうか。

SDGsの達成度については、国連の調査結果では、2023年半ば現在で、20%に満たないというのが現状だ。気候危機、コロナ禍、戦争の傷が、進捗停滞あるいは後退の大きな要因と認識されている。この実際の進捗と比べると、人々の意識の上では達成度が高めに出ていることがわかる。とりわけ日本では、SDGsを知っているという人の数は9割程度に上り、コトバが踊っていることの影響もあるのだろう。しかし実態はというと、行動にはまだまだ表れていないことを認識しておく必要がある。

行動を起こすには危機感を持つことが重要だ。実態を反映した危機感を持つように、今後の行動を考えていく必要がありそうだ。

<監修者プロフィール>
蟹江 憲史 (かにえ のりちか)


慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表。
北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院准教授を経て現職。
日本政府持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議構成員、内閣府
自治体SDGs推進評価・調査検討会委員他、株式会社レノバ独立社外
取締役を2017年から4年間就任。

専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。
国連におけるSDGs策定に、構想段階から参画。SDGs研究の第一人者で
あり、研究と実践の両立を図っている。

近著に「SDGs(Sustainable Development Goals)中公新書、2020」がある。
国連Global Sustainable Development Report(GSDR)の2023年版執筆の独立科学者15人に選ばれ
ている。博士(政策・メディア)。

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