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最終更新時刻:17時11分

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表したエンハーツ(R)の脳転移を伴うHER2陽性乳がん患者データについて

2024/09/17  第一三共 株式会社 

2024 年 9 月 17 日
報道関係者各位
会社名 第 一 三 共 株 式 会 社
代表者 代 表 取 締 役 社 長 奥 澤 宏 幸
(コード番号 4568 東証プライム市場)
問合せ先 コーポレートコミュニケーション部長 朝倉 健太郎
TEL 03-6225-1126

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表した
エンハーツ(R)の脳転移を伴うHER2陽性乳がん患者データについて


第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、エンハーツ(R)(トラスツズマブ デルクステカン、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)について、脳転移を伴うまたは伴わないHER2陽性乳がん患者を対象とした第3b/4相臨床試験(DESTINY-Breast12)のデータを欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。なお、本試験結果は医学雑誌「Nature Medicine」に掲載されました。

本試験は、脳転移の有無を問わず、前治療歴のあるHER2陽性の進行または転移性乳がん患者504名(脳転移を有する患者263名、脳転移の無い患者241名)における本剤の有効性と安全性を評価したグローバル第3b/4相臨床試験です。

有効性について、脳転移を有する患者集団において、主要評価項目である12ヵ月無増悪生存率*2は61.6%でした。また、その他の評価項目の一つである中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は58.9%でした。これらの結果は、安定した脳転移を有する患者集団と活動性の脳転移を有する患者集団において、一貫していました。安定した脳転移を有する患者157名における12ヵ月無増悪生存率は62.9%で、中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は57.8%でした。活動性の脳転移を有する患者106名における12ヵ月無増悪生存率は59.6%で、中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は60.1%でした。

脳転移の無い患者集団において、主要評価項目である客観的奏効率*3は62.7%(完全奏効 23名、部分奏効*4 128名)でした。

安全性について、新たな懸念は認められず、本剤の他の乳がんの試験と同様の傾向でした。対象患者(脳転移を有する患者263名、脳転移の無い患者241名、以下同順)において、グレード*5 3以上の主な有害事象は、好中球減少症(16%、18%)、疲労(9%、10%)等でした。間質性肺疾患(以下「ILD」)は、それぞれ16.0%と12.9%に発現したと医師により報告されました。脳転移を有する患者集団においては、グレード1が26名、グレード2が8名、グレード3が1名、グレード4が1名、グレード5(死亡)が6名でした。脳転移の無い患者集団においては、グレード1が22名、グレード2が6名、グレード5(死亡)が3名でした。

本試験データを通じて、脳転移を有するHER2陽性乳がん患者さんの治療におけるエンハーツ(R)の使用方法に関する科学的知見を深めることができました。

以 上

*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。

*2 無増悪生存率とは、治療中および治療後に病勢進行せず安定した状態である患者割合です。

*3 客観的奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上縮小した患者の割合です。確定した客観的奏効率を意味します。

*4 部分奏効とは、腫瘍が30%以上縮小した状態です。

*5 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。

乳がんとHER2発現、脳転移について

乳がんは、がんによる死亡の主な原因の1つであり、2022年には全世界で新たに200万人以上が診断され、約67万人が亡くなったとの報告があります。早期乳がんと診断された患者の生存率は高いものの、転移性乳がんの予後は悪く、5年生存率は約30%と推定されています。

HER2は、乳がん、胃がん、肺がんや大腸がんを含む多くのがん細胞表面に発現するタンパク質であり、乳がんの5人に1人がHER2陽性と言われています。HER2の過剰発現は、乳がんにおいて進行性疾患や予後不良と関連しています。

脳転移は、がん細胞が発生した場所から脳に広がることで起きます。転移性乳がんと診断された患者の約10%~15%が脳転移を発症すると推定されています。HER2陽性またはトリプルネガティブの転移性乳がん患者ではリスクが高く、これらの患者の30%~50%に脳転移が生じるとされており、依然として高いアンメット・メディカル・ニーズがあります。

第一三共のADCパイプラインについて

第一三共のADCパイプラインは、第一三共独自の二つのADC技術プラットフォームから創製された、臨床開発段階にある7つのADCから構成されています。

一つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、複数のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)をリンカーを介して結合させ、がん細胞の内部へDXdを届けるDXd ADC技術で、現在6つのADCがあります。トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ(R)、抗HER2 ADC)およびダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062、抗TROP2 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてアストラゼネカと共同で開発および商業化を進めています。パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402、抗HER3 ADC)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300、抗B7-H3ADC)およびDS-6000(R-DXd、抗CDH6 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同で開発および商業化を進めています。DS-3939(抗TAMUC1 ADC)は当社が単独で開発を進めています。

二つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、改変されたピロロベンゾジアゼピン(PBD)を結合させ、がん細胞の内部へ改変されたPBDを届けるADC技術です。DS-9606(抗CLDN6 ADC)は、このプラットフォームを活用した最初のADCです。

なお、ダトポタマブ デルクステカン、パトリツマブ デルクステカン、イフィナタマブ デルクステカン、DS6000、DS-3939およびDS-9606は、現在開発中の薬剤です。安全性および有効性はまだ確立されておらず、各国の規制当局による薬事承認は受けていません。

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