2024 年8月22日
株式会社 東 北 新 社
3D Investment Partners Pte. Ltd.による当社普通株式の非公開化に関する提案に対する 回答書の提出に関するお知らせ
当社は、2024年7月24日付け「3D Investment Partners Pte.Ltd.様による当社普通株式の非公開化に関する提案の受領及び特別委員会の設置に関するお知らせ」に記載のとおり、2024年7月23日、3D Investment Partners Pte. Ltd. (下「「3D 社」といいます。)から、3D社が設立するSPCによる当社の普通株式 (下「「当社株式」といいます。)に対する公開買付け及びその後のスクイーズアウト手続を通じた当社株式を非公開化するための一連の取引 (下「「取取引」といいます。)に関する提案(下「「取提案」といいます。)を受領しました。
取提案を受け、当社は、当社の意思決定に慎重を期し、また、当社取締役会の意思決定過程における恣意性及び利益相反のおそれを排除し、その公正性を担保することを目的として、当社の独立社外取締役5名全員から構成される特別委員会(下「「取特別委員会」といいます。)を設置するとともに、経済産業省が2023年8月31日に公表した「企業買収における行動指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(下「「企業買収行動指針」といいます。)に沿って、取提案に対する真摯な検討を進めて参りました。
その後、当社取締役会は、取年8月21日付けで取特別委員会から諮問意見書 (下「「取諮問意見書」といいます。)の提出を受け、取諮問意見書の内容を踏まえ、取提案について慎重に検討及び議論を尽くした結果、現時点で取提案に応じる旨の方針を決定することは相当とは考えられないものの、当社の企業価値の向上及び株主共同の利益の確保の観点から当社にとって最良の選択肢を追求するため、当社が指定する内容の守秘義務誓約書を3D社が当社に差し入れることを条件として、3D社による当社に対するデュー・ディリジェンスを、当社が指定する方法及び範囲で受け入れることを取日決定し、3D社に対して、かかる旨の回答書 (下「「取回答書」といいます。)を提出しましたので、お知らせいたします。
取回答書及び取諮問意見書の内容は、それぞれ別紙1及び別紙2をご参照ください。
3D 社による当社に対するデュー・ディリジェンスの結果、3D 社から取取引に係る再度の提案(下「「取再提案」といいます。)を受領することとなった場合は、取再提案について企業買収行動指針に沿った真摯な検討を進め、取特別委員会の判断内容を最大限尊重した上で、取再提案についての意思決定を改めて行う所存です。
別紙 1
2024 年8月22日
3D Investment Partners Pte. Ltd. 御中
東京都港区赤坂四丁目8番10号
株式会社東北新社
代表取締役社長 小坂 恵一
回答書
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
株式会社東北新社(以下「当社」といいます。)は、2024年7月23日付けで貴社より受領しました、貴社が設立するSPCによる当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する公開買付け及びその後のスクイーズアウト手続を通じた、当社株式を非公開化するための一連の取引(以下「本取引」といいます。)に関する提案(以下「本提案」といい、貴社による当社に対するデュー・ディリジェンスの受入れの要請を含みます。)について、経済産業省が2023年8月31日に公表した「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」(以下「企業買収指針」といいます。)を踏まえ、本提案について真摯な検討を行いました。また、当社は、貴社及び当社の支配株主である植村久子氏並びに本取引の成否と利害関係を有しない、当社の独立社外取締役 5 名全員から構成される特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)を設置するとともに、本特別委員会においても、本特別委員会独自のファイナンシャル・アドバイザー及び本特別委員会独自のリーガル・アドバイザーによる専門的助言を受けつつ、本提案について真摯な検討を行い、当社取締役会は本特別委員会から諮問意見書を取得しました。
本特別委員会から当社取締役会に提出された諮問意見書の内容、当社のフィナンシャル・アドバイザー及びリーガル・アドバイザーによる専門的助言その他諸般の事情を踏まえ、慎重に検討及び議論を尽くした結果、当社取締役会は、現時点で本提案に応じる旨の方針を決定することは相当ではないとの結論に至りました。
もっとも、当社は、企業買収行動指針の趣旨に鑑み、当社の企業価値の向上及び株主共同の利益の確保の観点から当社にとって最良の選択肢を追求するため、貴社が、別添「守秘義務誓約書」(開示は省略しております)の内容を十分に理解の上、実質的な変更なく当社に差し入れることを条件として、貴社による当社に対するデュー・ディリジェンスを受け入れることといたします。
つきましては、デュー・ディリジェンスの実施を希望される場合には、別添「守秘義務誓約書」(開示は省略しております)に署名いただき、2024年8月26日までに、当社に対して差し入れていただくようお願いいたします。
デュー・ディリジェンスの進め方やスケジュール等の詳細につきましては、「守秘義務誓約書」をご提出いただいた後に、速やかにご案内をいたします。
敬具
別紙 2
3D社からの提案に係る諮問意見
株式会社東北新社 御中
2024年8月21日
株式会社東北新社 特別委員会
同社独立社外取締役 鈴木 咲江子
同社独立社外取締役 上村 はじめ
同社独立社外取締役 ロケット 和佳子
同社独立社外取締役・監査等委員 小野 直路
同社独立社外取締役・監査等委員 長坂 武見
第1 本特別委員会の組成の経緯及び諮問事項
株式会社東北新社(以下「当社」という。)は、2024年7月23日付けで、3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下「3D社」という。)から、3D社が設立するSPCによる当社の普通株式(以下「当社株式」という。)に対する公開買付け(以下「本公開買付け」という。)及びその後のスクイーズアウト手続を通じた、当社株式を非公開化するための一連の取引(以下「本取引」という。)に関する提案(以下「本提案」という。)を受領した。また、本提案には、3D社による当社に対するデュー・ディリジェンス(以下「本DD」という。)の- 受入れの要請が含まれている。
当社は、経済産業省が2023年8月31日に公表した「企業買収における行動指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(以下「企業買収指針」という。)を踏まえ、初期的には本提案が「真摯な買収提案」に該当する可能性を否定し得ないと考えられたことから、2024年7月24日開催の当社取締役会において、本提案の検討に係る当社の意思決定に慎重を期し、また、当社取締役会の意思決定過程における恣意性及び利益相反のおそれを排除し、その公正性を担保することを目的として、当社、3D社及び当社の支配株主である植村久子氏(植村綾氏、株式会社NAMC及び株式会社from Bと総称して、以下「支配株主」という。)並びに本取引の成否からの独立性が確保された当社の独立社外取締役5名全員により構成される特別委員会(以下「本特別委員会」という。)の設置を決議するとともに、本特別委員会に対して以下の諮問事項(以下「本諮問事項」という。)を諮問した(以下「本諮問」という。)。
➢ 当社取締役会が本提案に対してどのように対応すべきか(本DDの要請への対応を含む。)
本提案においては、当社と3D社との間で本DDを行うための守秘義務契約が結ばれない場合には、本提案は2024年8月23日に失効するとされているため、当社取締役会は、当該失効日の前日である同月22日までに本提案への対応について一定の決定を行う必要があることから、同日に取締役会の開催を予定しているものと本特別委員会は理解している(以下、2024年8月22日に開催予定の当社取締役会を「本取締役会」という。)。本意見書は、当社取締役会が本取締役会において決定すべきと考えられる対応に関する判断について、本諮問に従い、本特別委員会の意見を述べるものである。
第2 本特別委員会にて検討した資料等
本特別委員会は、本諮問事項に対する意見(以下「本意見」という。)を述べるにあたり、以下の各行為を行った。
1 独立性及び専門性を有するアドバイザーからの助言
本特別委員会は、外部アドバイザーの専門的助言等を活用することで本特別委員会の専門性を補完すべく、①当社、3D 社及び支配株主並びに本取引の成否から独立し、かつ専門性を有するファイナンシャル・アドバイザーであるフロンティア・マネジメント株式会社(以下「FMI」という。)を、また、②当社、3D 社及び支配株主並びに本取引の成否から独立し、かつ専門性を有するリーガル・アドバイザーである弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所を、それぞれ本特別委員会独自のアドバイザーとして選任するとともに、本諮問事項の検討にあたり必要に応じて専門的な助言を受けた。
2 以下に記載の各書類の検討
(1) 3D 社作成の2024年7月23日付け「ReBORN東北新社~東北新社の非公開化に関するご提案~」と題する資料
(2) FMI 作成の2024年8月4日付け「3D Investment Partners Pte. Ltd.関与事例」と題する資料
(3) S&P Global Inc.作成の 2024 年 6 月付け「グローバル判明調査特定株式数ランキング 株式会社東北新社」と題する資料
(4) その他上記各書類の関連資料
3 特別委員会の開催及び審議・検討
本特別委員会は、2024年7月25日から2024年8月21日にかけて、合計5 回(第1回特別委員会(2024年7月25日)、第2回特別委員会(同年7月31日)、第3回特別委員会(同年8月9日)、第4回特別委員会(同年8月15日)、第5回特別委員会(同年8月21日))開催され、詳細な審議・検討を行った。
4 3D 社に対する、本取引の背景・目的・意義、本取引後の経営方針、本取引のスキーム、本公開買付けの価格、本取引の手続の公正性等に関する事項の文書による質疑
5 当社に対する、中期経営計画・経営方針、本提案についての見解等に関する事項の文書による質疑及び口頭によるヒアリング
6 当社の各事業部門責任者に対する、中期経営計画の実現可能性、2029年3月期までの事業運営方針等に関する事項の口頭によるヒアリング
7 当社の支配株主に対する、当社株式の保有目的、本取引が実施された場合の売却の意向の有無、3D 社からの協議の要請に応じる意向の有無等に関する事項の文書による質疑
8 その他本意見に合理的に必要又は適当と考えた書類等の検討 第3 本特別委員会の意見
本特別委員会は、以上の検討の結果、特別委員全員の一致により、本諮問事項に関して、以下のとおり本意見を述べる。
➢ 当社取締役会が現時点で本提案に応じる旨の方針を決定することは相当ではない。
➢ 3D社による当社内部の非公開情報の情報流出や目的外使用の具体的なおそれがないと合理的に判断することができる措置を厳格に講じた上で、本DDの受入れの要請に応じるべきである。
第4 本意見の理由の概要及び検討内容
1 当社取締役会が本提案に応じる旨の方針を決定すべきか否か
(1) 「真摯な買収提案」該当性の検討
① 検討の基準
「真摯な買収提案」該当性は、提案の①具体性・②目的の正当性・③実現可能性の3要素を総合考慮することにより判断すべきであり、①~③の要素が合理的に疑われる場合には、「真摯な買収提案」に当たらないと判断することがありうるとされている(企業買収指針15頁)。
② 本提案に係る検討
本提案において、公開買付け及びスクイーズアウト手続を通じて本取引を実行すること、公開買付けにおける当社株式1株当たりの買付け等の価格を600 円~650 円とすること、一段階目の公開買付けにおいて上限は設定せず、下限を50.1%(現時点で 3D 社が保有する当社株式を合算した割合)とすることが示されているなど、本提案においては買収対価や取引の主要条件が具体的に明示されていることから、本提案には①具体性を疑わせる事情は見当たらないといえる。
また、本提案においては、3D 社が本取引実行後に予定している企業価値向上策や経営体制が一定程度は具体的に示されていること、3D 社の投資ポートフォリオの中に当社の競合他社が含まれていることは確認されておらず、本提案が競合他社による情報収集等を目的としたものであると疑わせる事情は現時点では見受けられないことなどから、②目的の正当性を疑わせる事情は現時点で特段見受けられない。
しかしながら、本取引は支配株主が保有する当社株式の取得を前提とするものであるところ、企業買収指針上、支配株主が保有する支配的持分を第三者に売却する意思がないことが堅いと判明している中における支配的持分の買収提案は、③実現可能性が合理的に疑われる場合に該当するものとされているため、本特別委員会は、2024 年 8 月 1 日付けで、当社の支配株主に対し、本提案に関する意向について書面で質問した。その結果、支配株主から本特別委員会に送付された2024年8月8日付けの回答書(以下「本回答書」という。)において、当社株式を売却する意思はないとの明確な回答が得られた。支配株主による売却意思に関しては、企業買収指針上、買収価格が高ければ売却に応じる可能性もあることなどを踏まえると、当初の段階から当該事情のみを理由に実現可能性がないと判断することは不適切な場合もあり得るとされているものの、支配株主からは本回答書において、買収価格の多寡にかかわらず売却を検討することはなく、売却の要請を目的とした協議に応じる意向もないとの明確な回答が得られたものである。
したがって、現時点では、支配株主が保有する支配的持分を第三者に売却する意思がないことが明確に判明しているものとして、本提案は③実現可能性が合理的に疑われるものといえる。 以上からすると、本提案には①具体性があり、②目的の正当性を疑わせる事情は見受けられないものの、③実現可能性が合理的に疑われると考えられることから、現時点で、本提案は「真摯な買収提案」に該当すると判断することは相当ではないと考えられる。
他方で、現時点では 3D 社と支配株主は本提案に係る協議・交渉を行っていないところ、今後、もし仮に 3D 社と支配株主との協議・交渉が実現した場合に、支配株主が買収価格の水準次第では保有する当社株式の売却を検討する余地があるとの意向を持つに至る可能性は、極めて低いと考えられるものの皆無であるとは断言し得ないこと、3D 社が、今後、当社に対して買収価格の再提案を行い、公開買付けにおける当社株式1株当たりの買付け等の価格を650円以上に増額する可能性も否定できないことから、現時点で、本提案は「真摯な買収提案」に該当しないと断定することもまた相当ではないと考えられる。
(2) 当社の企業価値向上の観点からの検討
① 検討の基準
企業買収指針上、買収提案について検討を進める際には、買収後の経営方針、買収価格等の取引条件の妥当性、買収者の資力・トラックレコード・経営能力、買収の実現可能性等を中心に、企業価値の向上に資するかどうかの観点から買収の是非を検討すべきであるとされている(企業買収指針16頁)。
② 本提案の検討
ア 3D社による企業価値向上策
3D社が本提案において提示する当社の企業価値向上策は、大要、①広告プロダクション事業の強化戦略、②海外系動画配信サービス向けの映画・ドラマ制作市場への参入、及び、③不動産の価値向上策の実行である。しかしながら、当該企業価値向上策には、以下の点でその実効性や実現可能性に大きな疑問があり、当社の企業価値向上に資するものとは認められないと考えられる。
➢ 3D社は、①広告プロダクション事業の強化戦略のための具体的な施策として、広告代理店向けの企画・提案の実施を挙げており、これにより、これまで広告代理店が得ていた企画費を制作会社である当社が獲得できる余地があるとしている。しかしながら、大手広告代理店に関しては、そもそも事業戦略プラン、コミュニケーションプラン、CRコアアイディア、メディアミックスプラン、プロモーションプラン等は大手広告代理店の生命線であり、人材も豊富であるため、この企画費を制作会社である当社が獲得することは現実的には難しいと考えられる。
➢ 3D社は、当社は、①広告プロダクション事業の強化戦略のために、新たに広告代理店のクリエイティブディレクターのようなスキルを有した人材を確保する必要があるとしている。もっとも、大手広告代理店にとって、クリエイティブのコアアイディアを決定するクリエイティブディレクターの存在はまさに生命線であり、当社におけるクリエイティブディレクターの存在は、大手広告代理店との間でコンフリクトが生じることから、当社と大手広告代理店との間の既存の取引関係にマイナスの影響が生じる可能性を否定できないと考えられる。
➢ 3D社は、①広告プロダクション事業の強化戦略のために、リアルプロモーション制作のプロデューサーが必要であり、新たにイベント会社の制作ディレクターのようなスキルを要した人材を確保する必要があるとしている。もっとも、当社には、イベントなどのリアルプロモーションを担えるプロデューサーが既に100名ほど存在しており、既に社内に多数の人材が存在することから、外部の人材が必要な状況ではないと考えられる。
➢ 3D社は、②海外系動画配信サービス向けの映画・ドラマ制作市場へ参入するため、組織再編を行い、新規採用等を通じて映像制作ユニットを新設することを提案している。もっとも、当社は、映像コンテンツ制作能力は有しているものの、業界大手クライアントに対する映像コンテンツの販売ルートはまだ構築しきれていない状況である。そのため、当社は、まず、クライアントに対して、映像コンテンツを制作し、買い上げてもらう契約を締結したうえで、映像制作を行っているのが現状である。このような販路獲得ができていない現状において、3D社が提案するようなユニットの新設は、売上増加には繋がらず、むしろコスト増による利益減少を引き起こすものと考えられる。3D社の提案は、事業計画に対してリターンが得られないリスクが高く、安定的な収益確保に対する合理性が著しく欠けており、安定的な収益基盤確保に資する投資ではないと考えられる。
また、案件の確保ルート及びコンテンツの購入先(顧客)が見通せない中で、投資先行で体制構築していくことで成長を実現できる合理性はないと考えられる。
➢ 3D社は、3D社自身の強みとして、「専門家ネットワーク」、「投資の実績・知見」、「投資資金」を挙げ、当社の強みと組み合わせ、お互いを補完することで更なる付加価値を創出するとしている。もっとも、3D社が有する専門家ネットワークが、当社の事業領域において具体的にいかなる優位性を持っているかが不明である。
➢ 3D社は、当社の経営課題は、「縮小均衡の業界において創業からの付加価値に依拠した成長を実現するための思い切った経営の意思決定を行えるリーダーがいないこと」であると指摘しているが、本提案で示されている、縮小均衡の業界における3D社の事業戦略には、その実効性や実現可能性に疑問がある。
イ 3D社の経営能力
3D社において、当社と同規模の投資対象の発行済株式の全てを取得して経営した事例はない。なお、3D社は、ユニゾホールディングス株式会社のスポンサーに選定され、同社の発行済株式の全部を取得予定とのことであるが、同社は不動産事業を営む、また既に非上場化し、民事再生手続を申請した会社であり、当社とは事業領域が大きく異なっている。 このように、3D社において過去に発行済株式の全部を取得した上で経営した経験が見られないことに加え、上記アのとおり、3D社が提案する当社の事業戦略の実効性・実現可能性には疑義があることを踏まえると、3D社に当社を経営して付加価値を創出する能力があるかどうかは疑問であると考えられる。
ウ 当社による企業価値向上策(中期経営計画)
当社の現経営陣が経営する場合の企業価値向上策に関しては、当社は、2024年2月9日に「中期経営計画(-企業価値向上に向けた事業再構築-)」を策定・公表し、同年 5 月 17 日に更新を行っているため(更新後の当社の中期経営計画を以下「本中期経営計画」という。)、本特別委員会は、その進捗等について当社の各事業部門責任者に対するヒアリングを行った。
その結果、本中期経営計画は現時点では概ね計画どおりに進捗して- 10 - おり、かつ、当社は、本中期経営計画実装に係る課題も認識したうえで、当該課題への対応策も講じ本中期経営計画を遂行していると考えられることに加え、本提案を受けて当社経営幹部及び各事業部門の責任者において当社の企業価値向上に向けた強い危機感・使命感が醸成されていることが認められ、本中期経営計画の実現に向けた規律が更に強化されることが期待できると考えられる。
上記ア及びイのとおり、3D 社が本取引実行後に予定している各種施策は当社の企業価値向上に資するものではないと考えられ、また、3D 社の経営能力には疑義があると考えられる一方で、当社の企業価値向上策に関しては、本中期経営計画は現時点では概ね計画どおりに進捗していると考えられることを踏まえると、3D 社の企業価値向上策は、当社の企業価値向上策よりも優れたものとはいえないと思料される。
(3) 小括
上記(1)のとおり、本提案は実現可能性が合理的に疑われるため、現時点で「真摯な買収提案」に該当すると判断することは相当ではないと考えられ(但し、「真摯な買収提案」に該当しないと断定することも相当ではないと考えられる。)、かつ、上記(2)のとおり、3D社が本取引実行後に予定している施策は当社の企業価値に資するものと評価することはできないと考えられ、また、3D社の経営能力には疑義があると考えられることに加えて、当社が策定した本中期経営計画は現時点では概ね計画どおりに進捗していると考えられるため、3D社の企業価値向上策は、当社の企業価値向上策よりも優れたものとはいえないと考えられることを総合考慮すると、当社取締役会が現時点で本提案に応じる旨の方針を決定することは相当では ないと思料される。
2 当社取締役会が本DDの受入れの要請に応じる旨の判断をすべきか否か
本諮問事項には本DDの受入れの要請への対応方針が含まれるが、企業買収指針では、デュー・ディリジェンスは、通常、企業内部の非公開情報を提供して行うものであることから、競合他社への情報流出や目的外利用のリスクなども考慮した上で、検討・交渉を進める意義があると考える場合に実施することとなるとされている(企業買収指針37頁)。上記1のとおり、当社取締役会が現時点で本提案に応じる旨の方針を決定することは相当ではないと考えられるため、3D社との間で本提案に係る検討・交渉を進める必要性は必ずしも高くないと考えられる。もっとも、現時点においては3D社と支配株主は本提案に係る協議・交渉を行っていないところ、もし仮に今後3D社と支配株主との協議・交渉が実現した場合に、支配株主が買収価格の水準次第では保有する当社株式の売却を検討する余地があるとの意向を持つに至る可能性も、極めて低いものの皆無であると断定することはできないと考えられること、3D社が本DDを実施した結果、3D社の当社事業に対する理解が進み、本提案の内容を相当程度変更の上、当社の企業価値向上に資する施策及び当社株主共同の利益が確保された買収価格の再提案がなされる可能性も完全には否定できないと考えられることから、本DDの受入れの要請には応じるべきと思料する。
しかしながら、当社においては、当社の営業秘密やノウハウが漏洩し、又は目的外利用された場合には、大手広告代理店等の顧客や、発注先である協力会社の信用を失い、取引が停止されるリスクがあるほか、新規案件や進行中の案件も大きく影響を受け、収益に多大な悪影響が生じ、短期的な影響のみならず、将来における事業継続性も担保できなくなるリスクがあり、ひいては企業価値及び株主全体の利益に多大な悪影響を生じるおそれが十分にあるものと考えられる。
このような重大なリスクとおそれがあると考えられることに加え、本提案は現時点では当社取締役会が応じる方針を決定すべき内容のものであるとは考えられず、そのため、本DDの受入れの要請に応じた上で本提案に関して検討・交渉を進める必要性は必ずしも高くないと考えられることに鑑みると、当社が本DDの受入れの要請に応じるにあたっては、3D社との間で同社に厳格な秘密保持義務や違反時の補償義務等を課す内容の守秘義務契約を締結するなど、3D社による当社内部の非公開情報の情報流出や目的外使用の具体的なおそれがないと合理的に判断することができる厳格な措置を講じることを条件とし、前述のリスクを回避する観点から当社が合理的に指定する方法及び範囲で受け入れるべきであると思料する。
以 上