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最終更新時刻:17時11分

パッケージの開封から食べ終えるまでの喫食体験を評価 チョコレートの商品価値を生体・主観調査で評価~株式会社NeUと共同研究、第26回日本感性工学会大会で発表~

2024/09/20  森永製菓 株式会社 

森永製菓株式会社(東京都港区芝浦、代表取締役社長・太田 栄二郎)はチョコレートの喫食体験がもたらす情緒的価値と商品価値に関する研究を行い、チョコレートの喫食体験は、菓子自体の品質だけでなく、パッケージの形態・デザインなどからも、商品価値を好意的に感じられている可能性が示唆されました。本研究は、株式会社NeUとの共同研究で、2024年9月12~14日に開催された第26回日本感性工学会大会で発表いたしました。

<研究背景と目的>
食品がヒトにもたらす価値は複合的です。風味や食感などのおいしさに加え、パッケージの見栄え、簡便性など、さまざまな要素が含まれています[1]。これまで、「品質」がヒトに与える情緒的な影響に着目した研究は多く行われてきましたが、パッケージのデザインや包装形態、開封作業を含めた喫食にまつわる一連の体験について、その情緒的な影響を調べた研究はあまり多くありません。そこで、今回の研究では、当社チョコレート製品を含む市販品のチョコレートを対象に、パッケージの開封から喫食終了までの動作を「喫食体験」と定義し、その喫食体験の価値を定量化することを試みました。


<研究手法>
本研究では、表1に示す3つの市販品のチョコレートを用いて実験を行いました。被験者(開発業務に携わらない当社研究員)には脳血流・心電の計測機器を装着してもらい、パッケージを開封してから一粒のチョコレートを喫食終了するまでの一連の喫食体験をしてもらいました。また、喫食終了後には、体験価値の評価および入力、主観評価票を記入してもらいました。なお、製品の体験価値評価には、一粒のチョコレートを喫食した体験に対して「最大いくら支払えるか」という支払意思額(WTP, Willingness to Pay)を用いました。
生体情報は、一連の喫食体験中に継続的に取得しており、データ解析には、喫食体験前の安静時・喫食時・WTP評価値の検討時、それぞれの測定値を用いました。


表1 サンプル概要




<研究結果と今後>
主観評価およびWTP評価値の結果から、当社品Aは市販品B・Cと比較して「おいしさ」「本格感」「高級感」や「ちょっと贅沢な気分」を有意に感じられていることが分かりました。また、当社品AのWTP評価値の検討中には、好ましいブランドを選択する際に活動が高まることが報告されている背内側前頭前野の脳血流量[4-5]が有意に上昇していました。これらの結果から、生体・主観評価により開封から喫食終了までの一連の体験で得られる「本格感」や「高級感」といった情緒的価値やヒトが感じる商品価値の評価を定量化できる可能性が示唆されました。本研究は販売元である当社の社員が被験者であったため、今後は、幅広い一般消費者を対象にした研究を行い、喫食体験による情緒価値についてさらに探求していきます。



[1] 村上智明:私たちはどのような価値を感じて食品を購入しているのか?―フードバリューによる消費者行動の研究動向―, 農林水産政策研究所レビュー No.113,2023.
[2] 真川竜太,一楽建二,中村勇介,吉原 毅,阪井直哉,山本 宗,山崎英恵:ブローボトル形態冷菓の摂取が自律神経活動および精神疲労に与える影響, 日本食品科学工学会誌, 67(9),2020.
[3]山崎英恵, 森滝 望, 井上 和生:出汁がヒトの自律神経活動及び精神疲労に及ぼす影響, 日本栄養・食糧学会誌,71,133-139,2018.
[4]Jose Paulo Santos, et al.: Investigating the role of the ventromedial prefrontal cortex in the assessment of brandsm, Front. Neurosci., 2011.
[5]Michael Deppe,et al.,:Nonlinear Responses Within the Medial Prefrontal Cortex Reveal When Specific Implicit Information Influences Economic Decision Making, J Neuroimaging 2005;15:171-182.


<株式会社NeU吉田マネージャ―コメント>
今回の研究では、原料・製法・形に加えて包装までこだわったチョコレートの喫食体験が消費者に与える情緒的価値を、脳血流や心電計測を通じて科学的に検証しました。特に、開封から喫食終了までの一連の体験を評価し、WTP(支払意思額)と脳血流量変化の相関関係を見出せたことは興味深い成果です。本結果は、喫食体験のもたらす「本格感」や「高級感」「ちょっと贅沢な気分」といった情緒的価値の評価に活用できる可能性が考えられます。今後も、脳科学の知見を活用し、製品開発やマーケティングに新たな視点を提供していきたいと考えています。


■株式会社NeU のご紹介
株式会社NeU(ニュー)は、2017年8月に設立された、国立大学法人東北大学(以下、東北大学)と株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)のジョイントベンチャーです。東北大学 加齢医学研究所 川島研究室の「認知脳科学知見」と、日立ハイテクの「携帯型脳計測技術」を融合し、脳科学の知見と技術を軸とし、社会の様々な分野で人にフォーカスしたソリューションを展開し、脳科学の産業応用を目指しています。


<森永製菓グループの取り組み> 
当社グループでは、長期経営計画において『2030 年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』と定めました。「ウェルネス」とは、「いきいきとした心・体・環境を基盤にして、豊かで輝く人生を追求・実現している状態」と定義し、顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になることを目指しています。その一環として、「心の健康」に寄与する菓子食品のおいしさや楽しさといった情緒的価値を様々な手法で解明し、付加価値の高い商品の開発・提供につなげていく取組みを行っています。





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