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最終更新時刻:17時11分

世界初!遺伝子挿入がなく高品質なネコ iPS 細胞の安定作製に成功

2024/09/04  アニコムホールディングス 株式会社 

2024 年 9 月 4 日

大阪公立大学
アニコム先進医療研究所株式会社
ときわバイオ株式会社

世界初!遺伝子挿入がなく高品質なネコ iPS 細胞の安定作製に成功

<ポイント>
◇外来遺伝子のゲノム挿入がないネコiPS 細胞を世界で初めて作製。
◇さまざまな細胞への分化能力がある、高品質なネコiPS 細胞を実現。
◇避妊手術で廃棄される子宮由来細胞からのネコiPS 細胞作製にも成功。

<概要>
猫や犬への高度医療が発展する中で、iPS 細胞を用いた新規治療法の開発や、遺伝性疾患などの病態解明が期待されています。しかし、猫は犬に比べて研究事例が極めて少なく、高品質なネコiPS 細胞はありませんでした。

大阪公立大学大学院獣医学研究科の鳩谷晋吾教授、木村和人客員研究員らと、アニコム先進医療研究所株式会社、ときわバイオ株式会社の共同研究グループは、ネコ由来の6 つの細胞初期化因子をベクター※1に導入。これを用いて、不要な遺伝子の挿入がなく、三胚葉への分化能力のある高品質なネコiPS 細胞の作製に、世界で初めて成功しました。また、本ウイルスベクターを用いて、避妊手術の際に廃棄される子宮より採取した細胞からも、ネコiPS 細胞の作製に成功しました。今後、本研究で作製したネコiPS 細胞を活用した研究が進むことで、慢性腎臓病などの病態解明や、新たな細胞治療法の開発が期待されます。

本研究成果は、2024 年 9 月 2 日(月)に国際学術誌「Regenerative Therapy」のオンライン速報版に掲載されました。

鳩谷 晋吾教授
猫は、人間と一緒に生活している大事な家族の一員です。私たちも、日々獣医師として大学附属獣医臨床センターで多くの猫を診察しており、治療できない病気をたくさん診てきました。今回、長年の研究成果が実りネコiPS 細胞を作製することできました。今後も研究を継続し、ネコiPS 細胞を使用した新たな治療法開発や、難しい疾患の病態解明をしていきたいと思います。

<研究の背景>
伴侶動物として広く飼育されている猫においては、平均寿命の延伸により、人間と同様に慢性腎臓病や糖尿病など、長期にわたって生活の質を低下させる疾患の治療が課題となっています。このような慢性疾患は、従来の治療法である薬や手術で治すことができません。また、猫の品種や血統に起因する遺伝性疾患も問題となっていますが、これら疾患の病態を解明する研究もまだ進んでいません。こうした状況から、人間の医療と同様に、獣医療でもiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いてさまざまな細胞や臓器を作り出し、それらを再生医療、病態解明、創薬分野へと応用する研究へのニーズが高まっています。しかし、ネコiPS 細胞の作製は非常に困難で、世界的にもほとんど報告がありません。

これまでわずかに報告のあるネコiPS 細胞の研究では、レトロウイルスベクターなどが使用されていましたが、外来遺伝子が宿主細胞のゲノムに挿入され、宿主細胞ゲノムに傷がつきます。このようなiPS 細胞を各種細胞に分化させて、移植治療に応用すると、外来遺伝子が活性化して癌化する可能性も考えられます。また、細胞の増殖を助けるフィーダー細胞(マウス胎子線維芽細胞)を、ネコiPS 細胞と一緒に培養する必要があるため、臨床応用に適しません。さらに、iPS 細胞の品質を規定する重要な能力の一つに、テラトーマ形性能※2がありますが、これまでのネコiPS 細胞にはテラトーマ形成能がなく、品質の低いものでした。

以上のことから、遺伝子挿入のない(Footprint-free)、高品質な(テラトーマ形成能を持つ)ネコiPS 細胞を作製し、フィーダーなし(Feeder-free)で培養できる手法の開発が求められています。

<研究の内容>
本研究では、Footprint-free なネコ iPS 細胞を作製するために、これまでとは異なるタイプのRNA ウイルスベクターを使用しました。このベクターで導入された遺伝子は細胞のゲノムに挿入されないため、宿主細胞ゲノムに傷をつけず、細胞から簡便に除去することができます。また、ネコの6 因子(iPS 細胞作製に必須の 4 遺伝子(山中 4 因子)+初期化※3に有効とされる2 遺伝子)をネコ線維芽細胞へ導入しました。その結果、低効率ではあるものの、線維芽細胞からFootprint-free なネコ iPS 細胞の作製に成功しました。また本方法で、作製したネコiPS 細胞は、Feeder-free 培養が可能であり、テラトーマ形性能も有していました。

続いて、より効率の良いネコiPS 細胞作製法の開発を目指しました。ネコiPS細胞の作製効率が低い原因として、遺伝子導入されていない線維芽細胞が過剰に増殖し、遺伝子導入された細胞がiPS 細胞になる過程を阻害するのではないかと予想しました。そこで、薬剤によって遺伝子導入されていない線維芽細胞を除去して、細胞の初期化を行った結果、遺伝子導入された線維芽細胞からネコiPS 細胞を効率的に作製できるようになりました。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.anicom-med.co.jp/news/pdf/20240904.pdf

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